遺伝子組換え作物の商業栽培
国内の商業栽培は進まない。新潟県では、屋外栽培実験の中止を求め、地元の農家が昨年末提訴。北海道では、今年1月、屋外栽培を規制する全国初の条例を施行した。
新潟では、農水省系の独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構がけいかくしているGMイネの屋外栽培実験の中止を求めた。このGMイネは、芥子菜から取り出した、ディフェンシン遺伝子を組み込んだ。強い抗菌作用をもつたんぱく質を作って、いもち病や白葉枯病に強い品種が目的。
これに対して、生産者らは、(1)一般の水田のイネが交雑の被害を受ける、(2)GMに否定的な消費者による買い控えを招く、(3)耐性菌が出現し、ヒトや動植物中の抗菌物質が感染症に効かなくなる、と主張。
C先生:この手の話は、社会受容性の問題だと言われている。しかし、この受容性という言葉自体、市民社会を馬鹿にした「お上」の臭いがする。やはり「価値観の共有」が最終目的である。それには、すべての情報を完全に公開することが重要。消費者側も、「食事とは他の生命を食べる行為であり、ヒト用に作られた完全に安全な食品などは存在しない」、ということを十分に理解した上で、リスクとベネフィットを冷静に判断する必要がある。そして、お互いに敵対的にならないで対話を続けることが重要だと思われる。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ふつうの品種改良(交配、放射線照射などによる)も「遺伝子改変」の結果だし、DNAが激しい変化を受けた可能性もあるのに、皆さんあっさり受け入れる。かたや遺伝子組換えは、DNA分子のせいぜい2~3ヶ所を(はっきりつかめた形で)いじり、その産物も明確にわかっている。交雑とか耐性菌出現といった「恐ろしさ」は、前者のほうが圧倒的に大きいはず。
組換え作物を嫌う人は、「なんだか気持ち悪い」だけなのだろう。要するにサイエンスの話ではない‥‥。
投稿: 与太郎 | 2006年2月 9日 (木) 09時51分
>与太郎さん
確かに「なんだか気持ち悪い」の話なのだが、それこそが重要なのでは。サイエンスの話では無いが、だからどうするべきかを考えるという事のように思える。
なお、交雑の「恐ろしさ」については、品種改良の方にはある程度の経験がある。遺伝子組換え品は組換え作物1種ごとに未経験のものと扱われるべきだろうし、その意味では交雑を怖がるのはサイエンス的にも正しい気がする。
投稿: Tim | 2006年2月 9日 (木) 11時28分
>Tim殿
米国における組換え作物の巨大な広がりを考えますと、少なくとも「伝統的な組換え作物」についてはほぼ30年来の壮大な人体実験が続けられ、管見の限りで、健康影響は何ひとつ出ていないようだし、交雑がらみのトラブルも聞かないような‥‥。
作物ではなく野生の生態系を乱す懸念なら(少々ねじれた見方でしょうが)、コスモスは明治時代の移入種だし、タンポポは今や大半が外来種だし、都会の街路や公園から外来種を除いたらスカスカになる‥‥だからそれほど怖がる話か?‥‥なんて議論もありえますね。
投稿: 与太郎 | 2006年2月 9日 (木) 13時50分
>与太郎さん
交雑がらみのトラブルは米国でもいくつかあって、訴訟にもなっていたはず。交雑回避の策を取ることで解決している模様。ただし日本人のような怖がり方ではなく、怖がっている人向けの作物(要は日本向け輸出品など)を作っている農家の収益に被害があるというおはなしのよう。
向こうの作付けスケールでさえ、たまにはトラブルが発生するのだから、日本の狭い作地で気にする気持ちはよくわかる、ということで。
交雑によって何か恐ろしいものが出来るという怖さではなく、交雑の広がりを制御出来るかどうかという怖さの方です。特にブランド種を作っている農家にとっては厳しい話で、GM品種は交雑後に耐性を引き継ぐ可能性が高い=しぶとく生き残って管理外で広がる危険が高いという怖さ。
イネはともかく、ナタネあたりは実際に野生種との交雑が思った以上に広がっているという報告も。もちろん、通常?の品種改良でも同じ危険はあるのだけれど。
いずれにせよ、どう使いこなすかという議論が出来る状態になっていないから、そのステージに立ってもらうための「情報/価値観の共有」が必要ということでしょう。
「わからない」というのはそれだけでリスク評価値が跳ね上がるのだから、「なんだから気持ち悪い」でも別に馬鹿にしたものではなく。GM品を使いたい人と使いたくない人、双方の権利が損なわれないよう、歩み寄った話し合いが出来るようになれば嬉しいところでありますな。
投稿: Tim | 2006年2月10日 (金) 17時01分