昨晩のNHKスペシャル 煙と金と沈む島
煙は、中国重慶の石炭からの煙、金はニューヨークで温暖化ガス排出権取引によって動く金、そして、沈む島はツバルである。
ツバルの場合、しばしば使われる表現がまたもや使われていることに違和感があった。もっとも、本当の表現をしてしまったら、重慶とニューヨークと無関係になってしまって、番組が成り立たない。
その表現とは、「地球温暖化による海面上昇で沈む島」、である。
海面上昇であるが、様々な説があるものの、1900年から100年間で、平均的には、10~30cmといったところではないか。地球の温度は、人為的な温暖化とは別に、1800年ぐらいから上昇し続けているからである。
30cmしか上昇していないのに、あれほどの深さで海水が侵入するのはオカシイ。しかも、ここ数年での海面上昇は、1cm程度であるはずだから、それが原因で何かが起きるとは考え難い。
もともと、ツバルの海水の侵入のメカニズムであるが、番組でも紹介されているように、大潮のときの海水面よりも、畑や家などがある島の中心部が低いためである。もともと珊瑚礁でできている島なので、透水性が無いわけではない。しかし、このところ、サンゴが温暖化のためか白化現象で死滅したり、あるいは、排水のためや、あるいは、砂を建築用に使用したといったために、サンゴの状態が変わった。そのために、透水性が増加したのが原因だと思われる。
要するに、ツバルの生活が変わって、珊瑚礁に何か変化が起きたことが、今回のような大潮で海水が大々的に侵入する最大の原因であると思われる。
中国の石炭が地球温暖化を加速しているのは事実だろう。また、ツバルの人々が移住しなければならないことは事実かもしれない。だからといってツバルと中国の現状間の関連性が強い訳ではない。映像のマジックである。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
お恥ずかしい話ですが、「地球温暖化による海面上昇で沈む島」と信じていました。 ご指摘の「ここ数年での海面上昇は、1cm程度であるはずだから、それが原因で何かが起きるとは考え難い。」は正に「目からうろこ」の心境です。
環境問題を真剣に考えさせるために強い印象付を狙ってのことでしょうから、環境問題を世論に投げかける意味では成功でしょうが、C先生のおっしゃる「ダイオキシン恫喝」に近いことが温暖化ガスに対しても進行しつつあると言うことでしょうか?
投稿: 環蛙” | 2006年5月 2日 (火) 13時21分
こういった「誇張」が手法として利用されると、その嘘が明らかになった時点での反動が怖いですね。
米国の「温暖化は起きない」論のようなものに支持が集まってしまう危険性があるのではないでしょうか。
投稿: b-51 | 2006年5月 2日 (火) 13時39分
ツバルのことは何度かTVの報道で見ていましたが、一年であれほど被害が変わっていくとは思いませんでした。アメリカの自国主義にもいやになりますね。必ず自分に帰っていくことなのに、自分の住む国「地球」をもっと大事にかんがえて欲しいですね。
投稿: 木に家・自然素材の快適エコ住宅研究会 | 2006年5月 3日 (水) 09時54分
NHKさんが大好きなツバルの話につき:
1998年ごろ、あそこの方々が「島が沈む! 先進国は責任をとれ(カネをよこせ)」と叫んだものだから、オーストラリアの調査団が出向いて調べ、「たとえ沈下現象があるとしても、主因は島民の活動だろう」というレポートを出していますね。つまり、海浜地区の開発や、地下水汲み上げによる地盤沈下が原因だと。
なお、ネットで見た計測データによりますと、少なくとも1977年ごろから2000年まで、海面はちっとも上がっちゃいませんぜ。
NHKさん、ホラー話はもうおやめになったらいかが?
投稿: 与太郎 | 2006年5月 3日 (水) 12時43分
地盤沈下以外に局部的なジオイドの変化という可能性もわずかにありそうですが。
投稿: af | 2006年5月 4日 (木) 02時02分
島民の生活様式が変化した原因のひとつに「温暖化」がある可能性はあるでしょうな。C先生もサンゴの白化の推測原因としてらっしゃるし、トータルバランスが崩れた原因を挙げると「温暖化」に行き着く可能性は高いのではないでしょうか。
環境問題は答えが出にくく、また唯一の正解がある問題でも無いため、ある意味で大変わかりにくいものとなっているのでしょう。マスコミは「わかりやすさ」に拘る傾向がありますので、「わかりやすい嘘」に走るきらいがありますな。
「嘘」と言っても、上述のように可能性が高いのであれば、過程は違っても結論が同じであると言い訳が出来ましょう。環境問題ではむしろその「過程」の方が大切なように思いますけれども。
投稿: Tim | 2006年5月 8日 (月) 11時27分
マスコミがおかしな話を流したなら
訂正を求めればいいのに専門家もしないですよね。
誰も訂正しないからマスコミの言うことが
正しいとして定着する。
おかしいと思うなら直接NHKに言うべきでは?
それを誰もしないということはNHKが正しいんですよ。
投稿: IMN | 2006年5月18日 (木) 18時24分
マスメディアの影響力を正義というのであれば、国は放送局で支えられているわけですか?
確かに「小泉劇場」は大盛況でしたね。
「おもしろうて やがて哀しき 鵜飼いかな」の句のごとく、この5年間がいかに空虚であったかは今後の歴史が証明してくれるでしょう。
この情報化時代に、テレビが一方的に提供する情報が正しいと盲信するのではなく、自分の頭で情報の真偽を判断したいものです。
投稿: 環蛙” | 2006年5月18日 (木) 19時08分
>誰も訂正しないからマスコミの言うことが
>正しいとして定着する
明らかな間違いならともかく、微妙な間違いや意図的な曲解なんかは、ちょっとやそっとクレームがきたところで訂正しないでしょう。
民放は特に。
今回の件では、番組作成側が温暖化の深刻さをアピールする目的を持っていますし、ツバルの主張をそのまま取り上げただけということもあって、まず訂正は望めないと思います。
#まあ大物政治家などからのクレームなら別かもしれませんけど
だからこそ、C先生のような専門家の方が、そういった指摘をWebで行うことには大きな意義があるんじゃないでしょうかね。
とはいえ、「指摘」のほうに間違いがある可能性もありますので、結局は「複数の情報源から見聞きし、最終的には自分の頭で考える」ことが重要ってことだと思いますよ。
#すなわちメディアリテラシーですね
投稿: b-51 | 2006年5月18日 (木) 20時44分
この番組にかぎった話ではないんですが
もしマスコミの報道に間違いがあれば
>訂正しないでしょう。
ときめつけないで無駄でも直接まず言うべきでしょう。
メディアリテラシーをすべての人が身につけていればいいのですが現実はそうではありません。
理想をいくら語ったところで
間違いが定着してしまえばそれまでです。
投稿: IMN | 2006年5月18日 (木) 22時45分
>ときめつけないで無駄でも直接まず言うべきでしょう
それは確かにその通りでしょうね。
でも、他の方たちがNHKに対して抗議をしたのかどうかIMNさんはご存知なのですか?
最初からC先生なり他の方なりが、「抗議していない」ことを明示して意見を言っておられるのなら、最初のコメントも頷けますが。
ちなみに、過去の経験から「抗議しても無駄だ」と実感しておられる方々も多いと思います。
同じ労力を裂くなら、NHKに電話するよりはWebに記事を載せて多くの人に読んでもらうほうが効果的である可能性も多分にあります。
まあNHKの場合は「ご意見・ご質問」窓口がWebにあるので記事のコピーをここから送るくらいはやってみても良いと思いますがね。
投稿: B-51 | 2006年5月19日 (金) 11時03分
NHKは環境問題に対する報道に誤報がきわだって多いと感じています。環境問題で、明らかに誤報である報道に対して視聴者意見窓口に何度か苦情を送りましたが、回答をいただいたことは一度もありません。
この報道機関の姿勢に疑問を抱いたきっかけは2002年4月の「奇跡の詩人」報道です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%87%E8%B7%A1%E3%81%AE%E8%A9%A9%E4%BA%BA
この番組に対しても抗議文を送りましたが、全く無視のうえ検証もおこなわれておりません。
「NHKに電話するよりはWebに記事を載せて多くの人に読んでもらうほうが効果的である」というご指摘は適切だと思います。
「「ご意見・ご質問」窓口がWebにあるので記事のコピーをここから送るくらいはやってみても良い」というのは経験上は無駄でした。
投稿: のび太 | 2006年5月20日 (土) 18時32分
この番組の中で、ツバルの老人が「私は9人の子どもが成人して、孫が27人いる」って言ってました。サンゴ礁の島で3世代で14倍に人口が増えたら環境負荷が増えすぎていろいろトラブルが出ても不思議ではないのに、そこは一切無視して CO2のせいだと言うのは論理展開として無茶だろうと思います。
投稿: さんた | 2006年12月 2日 (土) 22時51分
珊瑚の白化だけでなくて、人口が増えると井戸水を汲みますが、「真水レンズ」のバランスが崩れます。
施肥がおおくて亜硝酸濃度も狂うとか。
http://chie.wschool.net/chie15/showart.php?lang=ja&genre=10011&aid=1133&PHPSESSID=61ae93e67d965a3240d0bbe246505860
投稿: pongchang | 2006年12月 3日 (日) 06時27分