11月22日: CO2排出権ブーム
タイ・バンコク北東部。バガスが高さ10数mまで積み上げられている。丸紅・NEDOの事業の一つとして、バイオエタノール工場が作られる。狙いは、クリーン開発メカニズム(CDM)による排出権の獲得。この工場では、08年初めから年間3万6千キロリットルのエタノールを生産予定。NEDOは、新技術の設備など総事業費の8割を負担しており、CDMが認められれば、排出権は日本政府が取得する。
世界銀行によると06年1月~9月のCDM取引はCO2換算で約2億1400万トン。
CDMを巡って、激しい争奪戦を繰り広げているのが英国、イタリアなどの欧州勢。
関係者からは不満が漏れる。地球環境を守り、途上国の発展を促すというCDMの本来の目的を実現するための道筋が見えにくいからだ。
例えば、植林支援。インドネシア環境省のマスネリヤルティ副大臣は、「植林事業を国連はなかなかCDMとして認めようとしない」と訴える。火災などのリスク管理や木が老いるとCO2を逆に排出するなどの問題があるためという。
ドイツ人実業家クラウス・トリフェルナー氏は、「森林保護と貧困撲滅のためにCDMを活用したいのに、工業がらみの大規模な事業が多く、草の根の住民のためのプロジェクトが認められにくい」。
CDMが多国籍企業のマネーゲームに使われ、途上国の持続的な発展が置き去りにされかねない、との危機感が感じられる。
横浜国立大学の馬奈木助教授のコメント。「途上国が自前で技術も資金も調達し、単独で行う『ユニラテラル』型のCDMによる排出権を買い取る方向が良い。国連としても、単なる削減策としてではなく、途上国の持続可能な発展や長期的な温暖化対策の観点からルールを見直していくべきだ」。
C先生:最近、CDMの実態を知るにつけて、中国・インドを対象とした大工業型のCDMには投資をすべきでないように思うようになった。馬奈木先生の主張は基本的な方向性として正しいと思う。
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