「早く石油を使い切れ!!」
アエラの記事。07.1.1-8号の記事である。内容は、石油を使い切った方が、人類は幸せな生活ができる、というもの。
内容は、私も講演の際に「冗談として」良く言う話と似ている。曰く、「今、皆さんが異常に忙しいとしたら、それは化石燃料のせいである」。「化石燃料がなくなると、時間がもっと濃密になる」。「都市居住が不可能になって、地域分散型居住になる」。。。。
養老先生は、このような話を、さらに包括的にあらゆる観点から真面目に議論されている。
この範囲内の話、すなわち、2300年から2500年頃に来るであろう化石燃料終了後の時代に限るのであれば、特に問題とすべき内容とは思わない。ただ、暴論的要素があるのは事実である。
現時点で、本当に真剣に議論しなければならない問題は、その段階に至る「経路」なのである。化石燃料への依存が全くできなくなれば、かなり穏やかな世界が来るのは明らかなのだが、その過程で相当ひどい状況が起きるのではないか、と心配している。
すなわち、自国の資源枯渇をいささかでも延ばそうとする各国のエネルギー戦略が、この地球上の大きな不安定要因になる。先進国+BRICsが奪い合いを行って、途上国は置いていかれる。そのため途上国では相当な人口増加が起きる。先進国がバイオエネルギーの奪い合いを行うもので、食糧が大幅に不足する。サトウキビ畑、パームヤシ林ばかりになって、自然に近い熱帯林は、一本も残っていないのではないか。
国によっては、某中東や極東の国のように、原子力開発に血道を上げる。それが満たされても満たされなくても、それらに由来するリスクが増えることは事実だろう。
しかもさらに悪いことには、原子力に使う核燃料自体も、そのうち、枯渇する宿命にある。
そうなると、太陽発電衛星といった巨大技術に依存しようとする国が出てくる。ところが、そのための金属資源が足らない。
そして、結果として、最後の楽園のような状況が実現する前に、大地獄を見る。
養老先生は、文末に近いところで、「この都会の秩序は、地球温暖化の犠牲の上にある。中国が全部都市になったら、地球は滅びる」、と書かれているが、これが必然的な道筋だとは思わない。地球温暖化で地球が滅びるかどうか、それは、人類の考え方一つである。もしも温暖化が本当に重大だという考え方が共有された暁には、すべての国が二酸化炭素を分離し、海中・地中貯留することを合意すれば良いだけである。これは、化石燃料の枯渇をかなり早めるが、途上国への支援を同時に実現すれば、いずれ絶対に枯渇するものなので、枯渇それ自体が悪いというものでもない。
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